クエン酸とビタミンCの違いは?【全く違う別の物質です】
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- ビタミンCは栄養素(摂取が必須)だが、クエン酸は栄養素ではない。
- どちらも有機酸で酸味がある。ただし、レモンの主な酸味成分はクエン酸。
クエン酸とビタミンCは別の物質です。
しかし、どちらも酸味のある有機酸であるうえ、レモンのように両方が多く含まれる食品も存在し、同じ物質だと勘違いされることがあります。
この記事では、クエン酸とビタミンC(L-アスコルビン酸)がどんな物質か解説し、違いや共通点をまとめ、混同されがちな理由も考察します。
さらに、クエン酸やビタミンCが多い食品や、それ以外の酸味成分が含まれる食品も紹介します。
クエン酸とビタミンC(L-アスコルビン酸)の違い
クエン酸とビタミンCはまったく別の物質です。両者の違いを表にまとめます。
物質 | クエン酸 | ビタミンC (L-アスコルビン酸) |
---|---|---|
どんな物質? | かんきつ類や梅など | 野菜や果物に多い |
摂取する必要 | なし (体内で合成可能) | 摂取が必須 (栄養素のひとつ) |
酸味 | 強烈な酸味がある | 酸味はあるが |
食品製造での | 酸味料やpH調整剤 | 酸化防止剤 |
化学的安定性 | 安定性が高い |
|

続いて、ビタミンCとクエン酸についての解説と、実際に味わってみた感想を記します。
ビタミンCは野菜や果物などに多い栄養素(弱い酸味あり)
ビタミンCは栄養素のひとつで、成人では1日100 mgの摂取が推奨されており、とくに野菜や果物に多く含まれています。
ビタミンCの物質名は「L-アスコルビン酸」で、有機酸の一種であり、クエン酸ほど強くはないものの酸味があります。
ただし、食品中の含有量は決して多くない(大半の食品で100 gあたり200 mg以下)ため、ビタミンCが食品の主要な酸味成分であるケースはほぼありません。
ビタミンCには、還元性があることも特徴です。酸化防止剤として利用でき、体内では抗酸化作用を示します。
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クエン酸はかんきつ類などに多い酸味成分
クエン酸は、とくにレモンなどのかんきつ類に多く含まれる有機酸の一種で、強い酸味を持ちます。純粋なクエン酸は結晶性の固体です。
レモンや梅干しのように、数%のクエン酸を含み、クエン酸が主な酸味成分となっている食品も存在します。
クエン酸はビタミンのような栄養素とは異なり、食品からの摂取が必須ではありません。ただし、クエン酸には1 gあたり3 kcal程度のカロリーがあり、炭水化物としてエネルギー源になります。
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ビタミンCとクエン酸が混同される原因はレモンかも?
同じ物質だと勘違いされがちなクエン酸とビタミンCには、以下のような共通点もあります。
こうした共通点のうち、レモンに多く含まれることは、2つの物質が混同される一因とも考えられます。
食品・飲料の商品表示やキャッチコピーでは、ビタミンC含有量を「レモン◯個分のビタミンC」と表すことが多く、レモンはビタミンCが多いイメージが強い食品です。
さらに、レモンは酸っぱい食品の代表格でもあります。
こうした情報やイメージが混ざり、ビタミンCとクエン酸が同じものだと勘違いされることがあるのでしょう。
ただし、レモンの酸味の主成分はクエン酸であり、ビタミンCではありません。続けて詳しく解説します。
レモンの主な酸味成分はクエン酸
クエン酸とビタミンCは、どちらも酸味がある物質です。しかし、レモンの主な酸味成分はクエン酸です。その理由は2つあります。
- クエン酸はビタミンCよりずっと強い酸味がある物質。
- レモン果汁中にはビタミンCの100倍以上のクエン酸が含まれる。
レモン果汁に含まれるクエン酸とビタミンCの量を比較します。レモン果汁100 gに含まれるビタミンCは50 mgほどです。一方、クエン酸は6.5 gほど含まれ、ビタミンCの100倍以上の含有量です。
同じ量で比べてもクエン酸の方がずっと酸味が強いうえに、含有量にも大差があるため、レモンの酸味にビタミンCはほとんど関係がないといえます。
ちなみに、レモン果汁100 gに含まれる水以外の成分は9.5 gで、そのうちの6.5gがクエン酸です。つまり、レモン果汁の水以外の成分のうち、じつに7割近くがクエン酸です。
クエン酸やビタミンCが多い食品とその含有量
クエン酸やビタミンCは、それらが添加された加工食品を除くと、どちらも植物性食品にとくに多く含まれます。
クエン酸を多く含む食品は、果物が中心です。
かんきつ類(とくにレモン)・梅・キウイフルーツ・パイナップル・いちごなどの果物や、トマトにクエン酸が多く含まれます。また、大豆やじゃがいもも、意外と多くのクエン酸が含まれています。
ビタミンCは、果物だけでなく、さまざまな野菜にも豊富に含まれています。
クエン酸とは異なり、ビタミンCの含有量は、野菜の酸味の強さとはあまり関係がありません。
どんな食品にクエン酸やビタミンCが含まれているか理解を深めるために、いくつかの食品での含有量を表にまとめています。
クエン酸以外の有機酸が酸味成分である食品
酸っぱい食べ物に、必ずしもクエン酸が含まれているとは限りません。
クエン酸以外の有機酸が主な酸味成分である食品として、「酢」「ヨーグルトや乳酸菌飲料」「ブドウやワイン」の3つを紹介します。
酢(酢酸菌が作る酢酸が酸味成分)
酢の酸味成分は酢酸です。
酢は、酢酸菌による発酵で、アルコール(エタノール)を酢酸に変えて作られます。そのため、含まれる有機酸のほとんどは酢酸であり、クエン酸などの他の有機酸はほぼ含まれません。
ネット上には、酢にクエン酸が多く含まれているという誤った情報も存在するため注意が必要です。
日本食品標準成分表に収載されている6種類の酢ではいずれも、酢酸と有機酸(酢酸を含む20種類の総量)の含有量が完全に一致しており、酢酸以外の有機酸はほぼ含まれていないことが分かります。
酢酸には揮発性があるため、酢はツンとした刺すような匂いと酸味があります。この「鼻に抜けるような刺激」は、不揮発性のクエン酸には見られない特徴です。
ヨーグルトや乳酸菌飲料(乳酸菌が作る乳酸が酸味成分)
酸味のあるヨーグルトや乳酸菌飲料などの発酵乳は、乳酸が酸味成分です。
牛乳に含まれる「乳糖」という糖が、乳酸菌によって発酵すると、「乳酸」が生成されます。
この乳酸によりpHが低下すると、牛乳に含まれる「カゼイン」というたんぱく質が沈殿し、一緒に乳脂肪分なども沈殿するのです。
沈殿した固まりを集めてヨーグルトとしたり、固まりの分離や均質化を行い乳酸菌飲料にしたりすることで、乳酸によるほのかな酸味のある乳製品が作られています。
以下に、牛乳や乳製品の有機酸の含有量を表でまとめています。
ブドウやワイン(酒石酸やリンゴ酸が酸味成分)
ブドウや、ブドウから作られるワインの酸味は、酒石酸とリンゴ酸が中心的であり、クエン酸は比較的少量です。
とくに、酒石酸はその名のとおり、ワインの樽にできる「酒石」から見つかって命名された有機酸で、ワインに特徴的な、やや渋みのある酸味を生み出しています。
酒石酸と「酒石」とは?
ワインを長期間、樽や瓶で熟成させると、底にキラキラした結晶が沈殿することがあります。
この結晶は酒石(tartar)と呼ばれ、主成分は酒石酸水素カリウムです。
1769年、スウェーデンの化学者シェーレが、酒石から純粋な酒石酸を取り出したことで、酒石酸(tartaric acid)と命名されました。
酒石酸は、ブドウに多く含まれ、ワインに特有の酸味をもたらす有機酸です。
酒石酸やその塩は、ベーキングパウダーやメレンゲの安定剤(クリーム・オブ・ターター)など、食品添加物としても使われています。
まとめ・脚注・参考文献
同じものだと間違われることもありますが、クエン酸とビタミンCは別の物質です。
クエン酸とビタミンCのどちらも、レモンに含まれる成分として知られますが、レモンの主な酸味成分はクエン酸です。ただしビタミンCにも、クエン酸より弱いものの酸味があります。
クエン酸は、かんきつ類や梅、キウイフルーツなどに多く含まれる有機酸で、強い酸味がある成分です。
ビタミンCは栄養素のひとつで、野菜や果物に多く含まれています。